P住吉神社本殿

 上宝沢住吉神社(昔は藤太宮)
 平安時代の末期、出羽国宝沢の里に藤太という
炭焼が住んでおり、炭を焼いては遠く白岩や寒河江
の里まで炭売りに行くのを仕事としていた。
 その頃、京の一条院の豊丸姫が日頃信仰する清水
の観音さまから夫となる人は、宝沢の住人藤太である
とのお告げがあり、京から宝沢まではるばる遠い旅路
を辿ってきた。途中あられもない姿をうつした「恥ずか
し川」、行きつ戻りつ思案にくれた「五度坂」、立ち登る
煙を見て訪ねた「姫沢」、長旅の疲れをいやした「股旅
の清水」などの説話を留めながら、ようやく藤太の住ま
いに辿りつき夫婦になった。
 或るとき、妻の豊丸姫は藤太に小判を渡して来て味
噌を買ってくるようにたのんだ。炭を背負った藤太は
途中国分寺の近くの池で鶫が泳いでいるのを見かけ、
この鳥を獲ろうと思い小判を投げつけたが、鳥にあたら
ず水中に沈んでしまい、米も味噌も買わずに帰った。
 姫から小判は値うちあるものと教えられ、これまで見向きもしなかった裏山の金で藤太は大金持ちになった。
上宝沢住吉神社本殿
炭焼藤太を祀る。